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~ハウス・フォレストの記録~ ノート29

あれ?
ここはどこだろう。
雲の中みたいなふわふわな感じがする。
霧がかかり、一歩手前も見えない。
目を細めると、霧の中に黒い人影が見えた。
ゆっくりと、こちらへ近づいてくる。
霧が生き物のように左右に分かれると、その人物の顔がはっきりと浮かんだ。
「お、親方!」
ミカエルは駆け寄った。
『今日はお別れに来たんだ。』
親方は静かにそういった。
「え?お別れ? いやだ、いやだよ、行かないで!」
ミカエルは子供のように泣き叫んだ。
『こらこら、男が簡単に泣くもんじゃない』
親方は優しく肩に手を置いた。
「親方、オレは・・・記憶もないほど小さなころに災害で両親が死に
親戚中をたらいまわしにされて、邪魔者扱いされてた。
オレは竜使いになって災害を消そうと思った。
両親を奪い、親戚の心をすさませた、災害を。
人と付き合うのがうまくなかったオレに親方はやさしくしてくれた。
・・・でも最初は、仕事だからだと思ってた。
竜使いを世話するのが仕事だから、仕方なくと思ってた。
でも、違った。親方は下宿してるみんなを
本当の子供のように大事にしてくれた。
初めて、居場所をくれた親方が居なくなったら
オレはどうすればいいの?」
親方は子供をあやす母親のようにやさしく言った。
『なにいってるんだ、お前はもう一人じゃないじゃないか。
楽しい仲間がいるだろう?』
ミカエルは鼻をぐずぐずさせながら親方を見上げた。
『みんな、お前のこと、仲間だと思ってるさ。
ほら、泣いていないで、立ちなさい。
お前が泣いていたら いつまでも安心できないじゃないか。』
ミカエルは右手で顔をぬぐった。
「親方・・・」
『ちゃんとお前を見守っているよ。』
「うん。」
『仲間と、力を合わせてがんばってくれ。』
不意に、知らない声が響いた。
親方の後ろに、見たことあるけど、名前は知らない男が立っていた。
「あなた、確か隣のハウスの竜つかいだった・・・」
男はうなずいていった。
『妹をよろしくお願いします。好き嫌いが多くて大変かもしれませんが。』
「えっ?」
ミカエルは男をよく見ようとまっすぐ見つめると、二人の後ろから光が発せられた。
やわらかく、安らぐような光。
『もう行かなくては。
あきらめずに、前に進みなさい。そうすれば必ず突破口はひらける。
そして、仲間を信じて、ともに助け合うのです。』
親方はそういうと、光のほうへ吸い込まれるように遠ざかる。
「あ、待って、親方・・・」
ミカエルは手を伸ばした。
が、親方と男は、光の中へと消えていった。

・・・・・
ミカエルは目を開けた。
「夢・・・か・・・」
頬と枕が涙で濡れていた。
「・・・・」
ミカエルは起きると、着替えて洗面所へ向かった。
「親方のこと、絶対忘れません。だから・・・見ていてください。」
鏡の中の自分に言い聞かせるようにいうと、冷たい水で顔を洗った。
少し早いけど、朝食の準備でもしよう。
そう思い、台所へ向かった。

「朝ですよ~。」
いつものように、みんなを起こす。
オペラとスバルはあくびをしながら部屋からでた。
「うーん。まだ眠いなぁ。」
「僕も。」
二人は顔を洗って、テーブルについた。
「さぁ、今日も一日がんばらなくちゃ。」
スバルはそういいながら大きく伸びをした。
「あれ、フーコさんは?」
オペラは空席を見ながら言った。
「あ、なんかあんまり眠れなかったらしくて。
今日は休むみたいだよ。」
ミカエルは目玉焼きの乗った皿を配りながら答えた。
「そっか。」
オペラは納得して、箸を取った。
「俺たちの竜も早くステップ3や4にならなきゃ、探索もできないよ。」
スバルは大きくうなずいた
「そうだよな、強くないと、精霊も集められない。」
「そういえば、ミッションはどうしたのですか?」
ミカエルは食器を配り終え、いすに座りながらいった
「あ」
二人は同時に声を上げ、顔を見合わせた。
「今日までだよな。」
「そうだ。」
「急いで集めようぜ!」
二人は、朝食を急いで食べ終え、出撃ピットへと向かった。

by mikaeruk2 | 2006-08-25 23:41 | 読み物(?)

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